紙媒体の衰退が進む中、孤軍奮闘ともいうべき存在が絵本です。
国際子ども図書館の蔵書調査によると、2022年に発行された児童図書の約3割を絵本が占めています。
本の出版自体が減少傾向にあるため手放しでは喜べませんが、それでも数ある教育図書を抑えての堂々一位は多くの絵本作家の誇りとなるでしょう。
ここでは、絵本の定義と英訳「PICTURE BOOK と STORY BOOK」について解説します。どうぞ、お付き合いくださいませ。
絵本とは
絵本とは、読んで字のごとく絵の本です。児童図書の部類に入りますが、大人向けとしか思えない絵本もあるので厳密に分けることは難しいでしょう。
絵の本というと漫画なども含まれそうですが、漫画がセリフで展開することに比べ、絵本の場合は独立した文章で展開します。そのため、漫画で読み聞かせはできませんが、絵本では読み聞かせができます。
というのは、漫画はほとんどが登場人物の動きとセリフで物語が進行していくからです。一方の絵本は絵と文が独立し、絵でほとんどを語ったり、あるいは詩的な一文ですべてを表したりします。ですから、絵本の方がいくらか想像力を掻き立てた広範な受け取り方ができるのではないでしょうか。
よい絵本とは
よい絵本という定義があるとすれば、悪い絵本というのもあるのかも知れませんが、幸いにも生まれて一度も悪い絵本を目にしたことはありません。きっと、公序良俗に反するとか、エログロ系が悪い絵本と定義づけられるのでしょう。
児童文学研究者のジョン・スティーブンスによると、よい絵本とは「文章と絵との間にズレがあるものが望ましい」としています。つまり、絵をそのまま文章で説明するのでなく、読者に少しだけ想像させる余地を与えるのです。
絵と文章とを比較したときの違和感や矛盾が緊張を生み、想像しながらギャップを埋めていくことで絵本の世界に能動的に入り込んでいきます。
意味を刷り込むのではなく、想像力を育くむこうした作業は、子どもの成長プロセスにはもちろん、大人になってからも必要な気がしてなりません。
PICTURE BOOK と STORY BOOK
絵本を英訳すると「PICTURE BOOK」です。「ILLUSTRATED BOOK」という呼び方もありますが、これは「PICTURE BOOK」より少し年長の子供向けの絵本を指します。つまり「PICTURE BOOK」よりテキスト量の増えた絵本が「ILLUSTRATED BOOK」であり、さらにテキスト量が増えて文章メインの本となると「STORY BOOK」と呼ばれます。
「ILLUSTRATED BOOK」も「STORY BOOK」も、テキスト量が多いため、大人向けの本と同様に扱われることがあります。決して大人と子供の区別がないというわけではありません。そもそも作品自体に普遍性があるため、本来なら対象年齢などないに等しいからです。
「ILLUSTRATED BOOK」や「STORY BOOK」といえば、「ピーターラビット」シリーズや「シェイクスピア全集」などが該当します。ピーターラビットは子供向けといわれてシェイクスピアは大人向けと考えがちですが、何歳の誰かを目的として絵本を描くなんて、よほど作者の身近な方を対象としない限り難しいでしょう。
狭義では、児童書を「CHILDREN’S BOOK」子供向けの絵本を「CHILDREN’S PICTURE BOOK」と呼びますいつでも何度でも開きたくなるのが絵本です。ほとんどの絵本に対象年齢が明記されていますが、。目安に過ぎませんので気にしない方が賢明です。読みたい本を手に取り、見たい本を開き、欲しい本を買えばよいのです。
絵本に感動する心は、大人も子供もいっしょですから。
むしろ大人の方が理解は深くなり、感動も大きい傾向にあります。
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