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『クリスマスに咲いたひまわり』~金色に輝く心を持つ少年の物語

南半球のクリスマス
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作: ウテ・クレーマー
絵: ラリッサ・シュティールリン
訳: 小貫 大輔
出版社: ほんの木
発行日:1991年12月24日
推定対象年齢:3歳~

「シュタイナー教育をベースとして4か国語で書かれ、子どもから大人まで楽しめる絵本」という帯に魅かれて手に取った絵本です。

冒頭の「金色に輝く心」という一節を読み、手に取ったことに確信を持ちました。

1990年代、日本がバブルの熱狂から冷めつつあった頃、南半球ブラジルサンパウロでは、4割がファベーラと呼ばれるバラック造りの街で暮らしていました。

あれから30年以上が過ぎ、日本とブラジルはどう変わったでしょう? 

そして、自分の心は何色なのだろう?

と自問自答しつつ、熱い街のさわやかなクリスマス絵本「クリスマスに咲いたひまわり」を紹介します。

『クリスマスに咲いたひまわり』の大まかなあらすじ

向日葵といえば夏を象徴する花。お日様を写し取ったような花を咲かせて、それこそお日様にま向かう姿は力強く、わたしたちに元気を与えてくれます。

そんな向日葵がクリスマスに咲くなんて、北半球の日本ではなかなか想像できないことです。

そうしたなかなか想像できないことを想像させてくれるのが絵本のよいところ。南半球のブラジルでは、クリスマスを夏に迎えるのです。

輝く金色の心を持った少年のフレーズで始まる物語は、病気のおばさんへのおつかいを拒否して動き始めます。少年がおつかいを拒んだ理由は「この手、この足は、自分のために動かすものであり、人へのおつかいのために動かすものではない」といったもの。

なるほどもっともな話です。何と誇り高い少年でしょう。だからこそ輝く金色の心なのです。けれども、おつかいを拒んだことで少年の心には汚いシミが広がり……。

心の輝きを取り戻すために困難を克服していくというストーリー。出逢う大人たちのセリフの重さと、明るく軽妙な絵とのコントラストが絶妙のハーモニーを奏でます。

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『クリスマスに咲いたひまわり』の背景にあるシュタイナー教育

ドイツ生まれの作者ウテ・クレーマー氏は、ブラジルサンパウロのシュタイナー学校で教鞭を執るかたわら「モンチ・アズール」というファベーラ(貧民街)で子供達に教える活動を始めます。その後、シュタイナー学校を退職し「モンチ・アズール」での活動に専念。「クリスマスに咲いたひまわり」は活動の中で生まれた作品です。

シュタイナー教育とは

シュタイナー教育とは、子ども一人ひとりの個性を尊重し、その能力を最大限に引き出す教育法です。ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)によって提唱されました。1919年にドイツの「自由ヴァルドルフ学校」を始まりとし世界60カ国以上に普及、日本でも多くの幼稚園や学校で取り入れられています。

教育とは子どもが「人間」となるための「出産補助」であるという考えのもと、子どもが自ら考え判断し、実践できる人間に成長することを目指しています。

身体と心、頭とのバランスを重視し、自然とのふれあい、音楽や美術を通じて感性を磨くなどの芸術教育と独特のカリキュラムで知られています。何よりも、夜に子どもたちに本を読み聞かせすることを大切にしています。

『クリスマスに咲いたひまわり』のポイント/ウテ・クレーマ―あとがきより

この絵本のポイントは、クリスマスに向日葵が咲くという北半球では考えられない現実、そして少年が自分の人生に対する外界の妨げや心の中の障害物を乗り越えていく点です。

北半球のクリスマスは二十四節気の冬至の頃であり、その日を境に日照時間が延びていきます。対する南半球ブラジルでは一年でいちばん太陽が照り付ける時期。

キリスト生誕を祝う日の太陽は、キリストの愛のように地球上にまんべんなく分け隔てなく注ぎ、北半球で一年の折り返しの日照時間への希望を、南半球で旺盛な生命力を育みます。

ウテ・クレーマーという人 ~人生の岐路で必ず出会う : 光の子どもたち in Canoa

1990年8月2日に サダム・フセイン率いるイラク軍 のクウェート侵攻を発端とした湾岸戦争。

世界各国の避難や経済的制裁をものともせずクウェートから撤退しないイラクに対する強制措置として アメリカ合衆国 主導の多国籍軍が結成された多国籍軍が実際に攻撃を開始し、事実上の戦争となったのは1991年の1月17日のことでした。

お茶の間にテレビゲームのような映像が映し出され、言葉を失った方は多かったことでしょう。

この湾岸戦争を機に、軍事大国アメリカは世界の警察の大義名分を手にし、日本も初めて自衛隊を海外へ派遣しました。

『クリスマスに咲いたひまわり』の出版は必然だったのかもしれません。

ルドルフ・シュタイナーとは

ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)は、オーストリア出身の哲学者。ゲーテ研究者として知られ、哲学、神秘思想、教育、芸術、農業、医学といった多岐にわたる分野で革新的な活動を展開します。

シュタイナーは人間には五感以上のものが備わっているとして物質至上主義の世界に警鐘を鳴らします。そして、人間の本質的な可能性を最大限に引き出し、個人と社会の調和を目指しました。

人智学の創始者でもあり、シュタイナー教育やバイオダイナミック農法の基礎を築きます。

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