マーシーキャンベル文
コリーナルーゲン絵
服部雄一郎訳
2021年1月21日発行 岩波書店
推定対象年齢:小学校低学年~
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これは嘘じゃない
余白を効果的に使った軽妙なタッチの絵が説得力抜群!
何気ない生活の格差を背景に、子供の真摯な眼差しでウソについて考える。
決してウソの是非を問うわけではない。
主人公の少女は、エイドリアンの話をウソだとはっきりさせたいだけなのだ。
そうしないと「ウソはいけない」と教わって自分がウソをつかずに生きてきたことの正当性を主張できないのかもしれない。
ウソの分別はできるようになったかもしれない……
画像引用元:https://www.iwanami.co.jp/book/b553697.html
かく言う私もウソはいけないと教わって育ったがこの世はウソに塗れていることを知り、ついて良いウソと悪いウソがあると少しは分別できるようになって時々ウソをつく。
他人を幸せにするお伽話のようなウソなら良いが、辱め陥れるようなウソは良くないだろう。
子供のうちだから許されるウソも大人になったら頭がイカれてると言われることの方が多い。
何才を境にそうなるのか知る由もないが、エイドリアンのウソが何才まで許されるのか、
そのうちにウソを現実にするのか見届けたい。
当たり障りなく生きるだけで本当にいいの?
コロナで人間関係が希薄になりコミュニケーション力が問われている気がする。
せめてメッセージだけでもとLINEを送るが、今まで見たことも聞いたこともないような漢字変換候補が筆頭に表示され、焦ってミスタッチすることもしばしばだ。
漢字変換を間違わないことだけに注意を払っているうちに本当に言いたかったことを忘れてしまう。
ウソを言わないことだけに注力して当たり障りなく喋っているときと同じように。
エイドリアンは本当にウソをついていたの?
エイドリアンはウソつきではない。
エイドリアンは想像力のたくましい、心豊かな少年だ。
たくましい想像力が、豊かな心が人類の未来を切り開いてきたのではなかったか。
エイドリアンの未来が愉しみだ。
想像は不足から始まる。
その背景に生活格差が横たわっていたりする。
子供の心は、ほんの少しのきっかけで良い方へも悪い方へも転ぶ。
マーシーキャンベル
本作がデビュー作となる。動物たちをこよなく愛し、夫と二人の子供、一頭の救助犬、三匹の保護猫とオハイオ州に住んでいる。
コリーナ・ルーケン
ワシントン在住。アメリカで注目度の高い絵本作家のひとり。ボローニャ・ラガッツィ賞など受賞多数。本書は初の邦訳作品。
エイドリアンはぜったいウソをついている [ マーシー・キャンベル ]
服部雄一郎
高知県在住。さまざまな媒体を通じてエコロジカルについて発信している。東京大学総合文化研究科修士課程修了。