作: 桜木 紫乃
絵: オザワ ミカ
出版社: 集英社
発行日: 2021年03月26日
推定対象年齢:小学校高学年~
~いつかあなたをわすれても~
平仮名がこれほど似合うタイトルの絵本を他に知りません。
象牙色の背景に真っ黒な髪の少女が頬に手を当ててぼんやりと何かを見つめています。
視線の先にあるのが少女の未来か今の心情かわかりませんが、平仮名の似合うタイトルと、どう考えても幼児向けとは思えない装丁が幅広い世代の心を絡めとって静かに重版されているようです。
超高齢化社会といわれて久しい日本。65歳以上の4人に1人が認知症といわれています。すでに予防や対策に余念のない方は多いのではないでしょうか?
そうした国民病とも呼ばれる認知症に、真っ向から向き合った絵本が「いつかあなたをわすれても」です。
桜木柴乃の選び抜かれた日本語と、日本特有の美意識ともいえる空間美を使いこなしたオザワミカの絵が、日本人のほとんどが抱えているかも知れない問題をしっとりと軽やかに奏でてくれました。
こんな素敵な絵本を創ってくれて有り難う、と心より御礼申し上げます。
日本が世界に誇る、日本人ならではの繊細で美しい絵本「いつかあなたをわすれても」を紹介します。
『いつかあなたをわすれても』の大まかなあらすじ
「さとちゃん」というお婆さんがだんだんと忘れ物がひどくなっていく物語。桜木紫乃の小説『家族じまい』を孫の立場から語った作品です。
さとちゃん(孫にとっての祖母)が自分の名前を忘れていくことを受け入れようとしている母親。
さとちゃんが自分を忘れたとしても悲しくはないという母親には、すでにさとちゃんがいつか他界することの覚悟ができているのでしょう。その母親もかつて少女だったしさとちゃんも母親でした。そしてもっと前は、やはり少女だったのです。
生まれ、育ち、子を産み育ててたくさんの想い出を作り、やがて老いて忘れ、死に至るまですべてが大切な時間として、日本の作家の日本語で語られ、日本の画家の絵で描かれています。時折、語り部のように現れる薄色の猫が効果的。
これ以上の紹介は必要ないでしょう。
ぜひ、手に取って読んでほしい絵本です。
書棚に置いておくと、きっとライフステージごとに自然と手を伸ばして開いてみたくなるでしょう。
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老い
老いについて調べると、身体的な老化はもちろんのこと、社会的にも変化し、退行 を伴う 現象と記されていました。別のサイトでは、老化とは成熟期以降に起こる生理機能の衰退。遺伝的要因やストレスに対し、適応力の低下によって起こる変化とも書かれています。
言葉として記すとそうなる
老化の原因
その老化の原因は、活性酸素による体の錆びと考えられています。活性酸素が体内にできる原因も様々あり、呼吸をした際に吸い込む酸素の一部が活性酸素となってしまったり、車の排気ガス、たばこ、紫外線、激しい運動や心理的ストレスなども、活性酸素の蓄積を誘発し、老化の原因になります。
老化対策
老化は40歳代より加速するそうです。なぜなら、40歳代になると活性酸素を取り除く役割を担う抗酸化酵素の能力が急速に低下してしまうからです。
そうであるならば、抗酸化作用のある食材を摂取すれば老化はある程度遅らせることができるかも知れません。
ただ、老化を遅らせたからといって忘れないかというとまた別の話でしょう。認知症にもさまざまな要因があるようですから。
なんにせよ、1分1秒を大切に、いつも一期一会の気持ちでフレッシュに過ごしたいものです。それもまた老化対策の一つでしょう。
認知症の現状と日本
WHOによると2015年の世界の認知症有病者数は5千万人。毎年1千万人近くが認知症になると報告されています。これが本当だとすると、2025年で1億5千万人、2030年には2億人の大台に乗る可能性があります。
日本は最たるもので65歳以上の4人に1人が認知症、もしくは認知症予備軍と呼ばれるMCIといわれています。さらに「2人に1人が癌になる」との説もあり、2025年4月からは風邪がインフルエンザや新型コロナと同じ5類感染症となってしまいます。
日常的に風邪気味だったり忘れっぽかったりする方は、病との線引きに難しい判断が迫られそうです。
ともあれ、ゆっくりと経年劣化はしてゆくのでしょう。
作者の桜木柴乃は、母親に忘れられていくことに「女の一生」の作品完成が近いことを知ったといいます。
楽しかったこと
過ぎてゆく時間
迎えるとき
すべてが生命の輝きなのです。
作者紹介/桜木紫乃 オザワミカ
桜木紫乃
1965年北海道生まれ。「雪虫」で第82回オール讀物新人賞。2013年『ラブレス』で島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞。『緋の河』、『家族じまい』(第15回中央公論文芸賞受賞)など著書多数。
オザワミカ
愛知県出身のイラストレーター。イラストの他、演劇の宣伝美術も手掛ける。2010年江口寿史氏との二人展「reply」は話題に。展示会活動多数。『BOOKMARK』イラストデザイン担当。