作 中野美咲
絵 おぼまこと
2003年10月初版 くもん出版
2002年おはなしエンジェル子ども創作コンクール最優秀賞作品
推定対象年齢:5歳~
百年たってわらった木
人生百年時代と言われて久しいのですが、百年どころか若い方の突然死が増えたり子供の自死率が高まったりして、人口減少に歯止めがかかりません。
コロナ禍以降の免疫力の低下と同調圧力による疎外感、異常なまでの物価高騰、増税しまくり戦争準備を始めている政府に嫌気がさして希望を持てなくなったなど、さまざまな背景が考えられます。
笑顔と希望なくして、どうして人が生きていけましょう。
はたして百年後に、今日生まれた赤ちゃんが健やかに生きているでしょうか?
本当の百年時代が誰のためのものであるか考えたくなって手に取った本です。
小学6年生の創作した「百年たってわらった木」を紹介します。
おぼまこと氏の力強い絵に魅かれて
木の絵本の紹介をいくつか続けてみようと思い、木という文字が入っている絵本を探していたら、おぼまこと氏の明るく力強い絵が目に飛び込んできました。
大きな木が枝を横に広げてニコニコ笑っている表紙です。
表紙絵はオチであり、物語の始まりは枝葉をピンと上に向けたカッコイイ木。
もう百歳なのに真っすぐに立って木肌もツヤツヤピカピカです。
頑張り屋さんで百歳とは思えないくらい若々しくてカッコイイ木なのですが、たったひとつ悩みがありました。
飾らずに自然体で生きる
それは友達がいないこと。
百年も頑張ってきたのに、誰ひとり友達がいないのです。
虫も鳥もケモノも、その木には近寄ろうとしません。
カッコイイ木はさみしくてションボリうなだれてしまいます。
上を向いていた枝葉がションボリ下を向くと、葉陰ができました。
暑い日のことです。
すると……
木を中心に虫や鳥や動物たちの豪華キャストによる自然界の営みが盛り込まれ、人間の営みとの相違、問題点を浮き彫りにする展開に唸らされました。
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つい振り返ってしまう還暦
百年には満たないけれど還暦に届きそうな年頃になり、還暦というくらいだから人生を一周したのだなぁと、あれこれ思い出す毎日です。
反抗期のツッパリに始まり、知ったかぶりの虚栄心で満たしてきた60年は、今やアンチエイジングに精出す日々となってしまいました。
何処まで自分を偽って生きてきたのでしょう……
そしてこれからも誤魔化してはぐらかして無かったことにして生きていくのだろうか……。
友達は? と改めて問い直してみると、胸に手を当ててうつむくばかりです。
ときどき空を見上げたり、
公園の大きな木の袂に休んでいると
不審者のような目で見られたり……というのも単なる自意識なのかも知れません。
傲慢な半生の報いとしての現状に、やっぱりションボリしています。
でも、この本を携えていると胸がホンワカと温かくなってくるのです。
まずは、この本が僕の友達になってくれました。
この先もずっといっしょだと思います。
ずいぶん歳を食ってしまいましたが、ここからが人生です。
百年生きましょう!
木に癒され、勇気をもらうことは多い
雷に打たれ、折れてもそこからまた芽吹き上を向いた一本の木としてゆっくりと成長していく姿に何度勇気づけられてきたことでしょう。
枝葉に小鳥のさえずりを集め、木漏れ日に人を癒し、実りにリスやクマが駆け寄ってきます。
目を見張るような紅葉に歓喜し、落葉に涙するのは人として自然なことなのかもしれません。
一年の周期に、人の一生を重ねてしまいます。
木に関する絵本、どれも優れものばかりです。
作者は小学6年生
どんな作家が書いたのだろうと作者プロフィールを読んでビックリ!
2002年のおはなしエンジェル子ども創作コンクール最優秀賞受賞作品であり、
作者の中野美咲さんは執筆当時、三重県の小学6年生でした。
イジメが社会問題化していたことを懸念して、多様性を受け入れることの大切さを訴えたかったというから恐れ入ります。
素晴らしい本を書いてくれて有難うございました。
素晴らしい才能に乾杯!