- 作:サトシン
- 絵:ドーリー
- 初版発行日:2015年5月17日
- 発行所:株式会社えほんの社
- 推定対象年齢:5歳~
コロナ以降「ま、いっか」で済ませられない事象が相次いでいる。
だが、逆に「ま、いっか」と達観する部分もないと心が壊れてしまいそうだ。
そんな思いで紹介する絵本。
サトシンとドーリーとバブル
原作者のサトシンは1980年代バブル期に青春真っ盛りだった世代だ。
作画を担当したドーリーは、そのバブル期真っ盛りの時代に生まれている。
バブル繋がりなのかどうか、何とも蛭子能収の漫画を思い出させる脱力感が魅力的な絵本だ。
そういう蛭子能収の漫画がヒットしていたのもバブル期真っ盛りの頃だった。
バブルの気泡はあらゆる所へ飛んでいる。
作者紹介
- サトシン:1962年生。絵本作家。大垣女子短期大学客員教授
「うんこ!」「とこやにいったライオン」「でんせつのきょうだいあんまんをはこべ」
「どうぶつまぜこぜあそび」「どうぶつ川柳 ぼく、だーれ?」など著書多数
- ドーリー:1986年大阪生まれ
サトシンとの絵本「どうぶつまぜこぜあそび」で絵本デビュー
「ま、いっか」で済ませて何とかなることもある
主人公はテキトーさん。
安易なネーミングはタイトル通り。
会社に行く時間をとっくに過ぎてから目覚めたその時から始まる「ま、いっか」
遅刻ついでにゆっくり朝食を採り、バスに乗っても会社のあるバス停を乗り過ごして海へ。
おまけにカバンはバスの中に置き忘れ……
延々と続く失敗のすべてを「ま、いっか」と乗り切る楽観ぶり。
「なんとかなる」は何とかなるもので物語はオチを迎える。
作者とほぼ同時代を生きてきた方々は共感するところが多いのではないか。
かくいう私も新人類と呼ばれ、バブル期に青春を送った世代だ。
高級ブランド品をクレカで買い求め、カード破産する人が多かったあの頃。
それでも何とかなっていた。
みん明るく優しかったから
「ま、いっか」初版発行の時代(2014~2015年)
本や映画、ドラマは創られる理由がある。
そのカギを握るのが創作された前後の時代背景だ。
何らかのプロパガンダを含むケースもあれば、作家の鋭敏な感性が来たるべき未来を映し出す場合もある。
「ま、いっか」の出る前、2014年には下記のようなことがあった。
- 小保方晴子STAP細胞発見騒動
- 消費税8%(4月)
- 集団的自衛権の行使容認を閣議決定(7月)
- 広島豪雨で74人死亡(8月)
- 御岳山噴火で57人死亡
- デング熱拡大
- 日銀が追加の金融緩和追加
- 特定秘密保護法施行(12月)
小保方晴子STAP細胞発見騒動は師である若月氏の謎の死でますます混乱した。
「ま、いっか」と看過できない事件で、多方面からさまざまな考察が発表されている。
国民の知る権利を制限する「特定秘密保護法施行」と併せて、客観的な視点が必要だと思い知らされる。
そのぎりぎりのところで「ま、いっか」となるのかもしれない事件だ。
そして「ま、いっか」発行の2015年に何があったか?
- IS邦人人質殺害(1月)
- 15年振りに日経平均株価が2万円台へ(4月)
- 川内原発再稼働(8月)
- 安保法成立(9月)
- 東京五輪のエンブレム・国立競技場再選考へ
- 辺野古基地着工へ(11月)
すでに「ま、いっか」を通り過ぎたようなニュースばかりだ。
日経平均株価が2万円台となったことは、2020年開催の東京五輪への気運の高まりと共にバブルの再来のよう。
東京五輪の結果がすべてを物語っている。
「ま、いっか」の時代は格差の拡がった時代
前年からの日銀の金融緩和が株高を呼び込んだのは明白で日経平均株価は3万円を超えることもあった。
一方で円安が進み物価は上がって庶民の暮らしが困窮した。
それは今も続いている。
「ま、いっか」は慶事の前触れ?それとも世直し運動?
江戸時代末期の1867年(慶応3年)8月から12月にかけて、近畿、四国、東海地方などで「ええじゃないか」と現在のデモ行進にも似た騒動が発生した。
「天から御札(神符)が降ってくる、これは慶事の前触れだ」という話が広まり、庶民が仮装して「ええじゃないか」を連呼しながら集団で熱狂的に踊った。
「ええじゃないか」と共に政治情勢が歌われたことから、世直しを訴える民衆運動という捉え方もある。
その後、日本は明治維新を迎え、価値観が一変する。
明治維新とコロナ後~「ええじゃないか」と「ま、いっか」~
価値観が一変する点では非常に似ている。
ただ、隣人との距離が拡がり壁ができてしまった。
物価高騰で株価も上がっているので、この機にあらゆる資産運用にチャレンジしてみるのもよいだろう。
バブル期のカード破産と同じ憂き目に遭わないような堅実な運用が大切だ。
100%でなくてよい。
「ここまでで、ま、いっか」という制限を設けておこう。
「ま、いっか」は自制と寛容の絶妙のバランスから成り立つ。