作・絵: のぶみ
出版社:草炎社
発行日: 2005年11月
推定対象年齢: 3歳~
今や日本を代表する絵本作家の一人となった「のぶみ」さん。絵本作家になりたくて、デビュー前から何百冊もの絵本を描いていたほどの情熱家。その情熱は40代後半の2025年にも衰えることなく、毎日妖精の絵を描いたり、YouTubeではファンからのDMに感情移入して涙することもしばしばです。
作品数が多くジャンルも幅広いため、読み手の嗜好によってどれもが代表作となり得るのですが、とりわけこの『あかちゃんおうさま』は、軽やかな絵と淡々と進むストーリーの中に根付いた深いテーマがじんわりと胸に沁みる作品。
個人的には、日本人作家による絵本として「100万回生きたねこ」や「いつかあなたをわすれても」「おごだでませんように」に匹敵する、世界遺産に推薦したいほどの名作だと思っています。
ぜひ、ご一読して戴きた位絵本『あかちゃんおうさま』を紹介します。
『あかちゃんおうさま』の大まかなあらすじ
生まれたときから赤ちゃんなのに王様の物語です。本を開くまでは、よく殿様の末裔や大臣の血族とかで生まれてから死ぬ直前まで勘違いして生きて、最後の最期にようやくわかるという定番物語なのかな、と思っていました。
しかし、さにあらず。さすがは多作なのぶみさん。
ちゃんと周りの大人が配慮してだんだんと『あかちゃんおうさま』は自分のことは自分でしなければならなくなります。
人の一生を、シンプルな絵で淡々とスピーディーに進めていく展開が可愛い絵と見事にマッチング。ラストでホロリとさせられました。
ネタバレになるので、紹介はここまでです。
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親離れと子離れ
『あかちゃんおうさま』の口コミ評価を読むと、受け取り方は人それぞれなのだと実感しました。
私は親離れ・子離れ、自立がテーマなのかなと思いました。
海外には親の子供への過干渉・過保護を表す「ヘリコプターペアレント」「カーリングペアレント」という言葉があります。日本では、いつまでも生活を親に依存する「8050問題」とかが話題になっています。自分のやりたいことより、親の意向を優先する子供も少なくありません。
労働寿命が延びているのは確かですが、こんな共依存状態では、いつまで経っても日本の少子高齢化は解消しないでしょう。
この絵本では、大人一人ひとりが、「あかちゃんおうさま」に対して絶妙のタイミングで自立を促しています。しっかりと世話をしてきて「あかちゃんおうさま」のことをつぶさに観察してきたからこそ、信頼して送り出したのです。もちろん万一の責任を負う覚悟もあります。
「百獣の王ライオンは我が子を先人の谷に突き落とす」という諺や、巣立ちのための飛ぶ練習をさせる鳥たちを観察していると「あっぱれ!」と思うし「頑張れ!」とエールを送りたくなります。
自分の人生を生きるのは自分以外にありません。
ラストの「あかちゃんおうさま」の表情にホロリ
ラストの「あかちゃんおうさま」の表情にはホロリとさせられました。
もしかしたら、3~4歳の子供にはわからないかも知れません。
でも、絵はかわいいし物語もいたってシンプルです。だから、今すぐ理解しなくても何かが残ればいいと思います。
「いつかまた読み返す」それくらいのスタンスで!
それができるのが絵本の素晴らしいところ。
そして後世に読み継がれていくのです。
のぶみさんの「あかちゃんおうさま」は、世界遺産にしたいくらいの絵本です。
NHKにも出演していた「のぶみ」さんは人気のYouTuberで、なんと元暴走族!
元暴走族という肩書が本当なのかと思えるほどピュアな精神の持ち主であるのぶみさん。YouTuberとしても活躍中ですが、DMを読み上げるたびに涙を流しています。暴走族時代も飾らない素朴な人柄で人望を集め、総長と呼ばれるほどだったそうです。
波乱万丈の人生でありながら無垢な魂を保ち続けているのぶみさんだからこそ、「あかちゃんおうさま」のような深い作品を生み出せたのでしょう。
できれば、常に手元に置いて結婚や出産、子どもの卒業式など、何年かおきに読み返してほしい作品。日本人作家による絵本として世界に誇りたい一冊です。
~のぶみプロフィール~
- 本名:斎藤信実(さいとうのぶみ)
- 生年月日:1978年4月4日
- 出身地:東京都品川区
- 1999年2月 『ぼくとなべお』で絵本作家デビュー