作画: 谷口 智則
出版社: 文溪堂
発行日:2013年11月
対象年齢:3歳~
雪の降る夜に、ひと目でサンタクロースの家とわかる作りの家がたくさん並んでいます。何と素敵なオープニングなのでしょう。愛嬌があって頼りがいのあるサンタクロース100人が、絵本の中から飛び出さんばかりに四季折々の生活を楽しんでいます。こんな視点のクリスマス絵本はなかなかお目にかかれません。
誰もが知りたいと思っていたサンタクロースの正体と私生活を描いた「100にんのサンタクロース」をご紹介します。
『100にんのサンタクロース』の大まかなあらすじ
100にんのサンタさんは「100人のサンタクロースがすむまち」で何をしているかというと……、来たるべきクリスマスに向けて準備をしているのです。
春になると、今年のクリスマスに配るプレゼントの数をチェックして配達エリアの地図を確認。夏はお花に水をやったり、クリスマスツリーを育てたり。秋には雪を降らす練習をしたり、星空に虹をかけたり。
そして冬になると、新しいサンタ衣装をしつらえてプレゼントの準備。
とまあ、ビジネスモンスターの日本人並みの勤勉さでサンタさんたちの1年はあっという間に過ぎてしまいます。でも、楽しそうに見えるのは、谷口智則の大胆な筆致で愛嬌たっぷりに描かれているからでしょう。同じサンタクロースの私生活を暴いた絵本では「サンタクロースの11かげつ」がありますが、お国柄のせいか随分と趣が異なります。
ただ、こちらの100にんのサンタクロースのお話は、クリスマスプレゼントを配り終わってからが本番です。
そのあたりはどうぞお手元でお楽しみください!
サンタの一年はクリスマスのためだけにある
アメリカで好き放題に描かれるサンタもいれば、100人の町で勤勉にクリスマスの準備をするサンタさんもいます。ひょっとしたら、世界中、月や星にもサンタクロースの住む町があり、50人のサンタクロースが住む村や1万人のサンタクロースの暮らす都市があるのかも知れません。
いずれにせよ、サンタさんは世界中の子供たちにクリスマスプレゼントを配るために一年を過ごしています。
子供の未来を考えるのは大人として当然のことでしょう。大人となった今、子供だった頃の自分にどんなプレゼントができるのかと考えます。3歳の頃の記憶はおぼろですが、4歳のときは「もっと広い砂場が欲しくて」5歳では「たくさん絵を描ける落書き帳」でした。
子供の欲しいものは年齢によって変わっていきます。だからサンタさんも大変です。けれども、子供の笑顔を見ると、一年どころか一生をかけても惜しくないと思わせてくれます。
始まりは「おおきいサンタとちいさいサンタ」
100人の町のリーダーは「おおきいサンタとちいさいサンタ」です。この2人、隣に住んでいたのですが、初めのうちはまったく交流はありませんでした。ところが、それぞれがそれぞれの持ち分のクリスマスプレゼントを配り終わったと思った後に、ひょんな事が起こります。
そして2人は協力して大急ぎで事を処理します。
谷口智則による2015年に描かれた作品。なので後出しになりますが、2人のサンタクロースの趣のある顔と意外な展開でぐいぐい引き込まれていく絵本です。
人と人との縁は、ひょんなきっかけです。そして人が人を呼び、自然と100人の町になったのだなぁと想像しました。併せて読むと面白さも倍増、さらに想像が拡がります。
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作者紹介/谷口智則
谷口 智則(たにぐち とものり)
1978年大阪府生まれ 金沢美術工芸大学日本画専攻卒業(在学中にボローニャ国際絵本原画展を見たことがきっかけとなり、独学で絵本作りを始める)