作: 森山 京
画: 佐野 洋子
出版社:あかね書房
発行日:1997年11月30日
対象年齢:小学校低学年~
絵本を選ぶときの判断基準は絵・タイトル・作者と、人によって異なります。さらに、読み聞かせたいお子様の年齢と性格、あるいは奇抜さで選ぶ方もいるでしょう。
この絵本を選んだ理由は「魔法使い」という奇抜な発想と、佐野洋子の絵です。
いかにもひねくれていそうな佐野洋子の描いた魔法使いがクリスマスをどう過ごすのか、クリスマス絵本としてどんな風に読者を納得させてくれるのだろう? と森山京のストーリー展開に興味を示しました。
佐野洋子の奔放で生き生きとした描写が森山京のストーリーと見事に調和したクリスマス絵本。
子供への読み聞かせはもちろん、大人の書棚のコレクションに加えても結構な存在感を示しそうです。
佐野洋子&森山京の「まほうつかいのクリスマス」をご紹介します。
『まほうつかいのクリスマス』の大まかなあらすじ
クリスマス・イヴの夜にサンタクロースをねたむ魔法使いのおばあさん。なかなか思いつかない発想です。魔法使いですから、サンタクロースとどっちが強いのか興味がありました。きっと魔法を使ってサンタクロースの邪魔をするのだろうと……。
そんな素人の想像をはるかに超える森山京と佐野洋子コンビ絵本。お人よしの魔法使いのお婆さんは、サンタクロースに変装して子どもたちにプレゼントを配ろうとします。先にプレゼントを配っておけば、後から来たサンタクロースがきっと困ってしまうだろう、と考えたからです。何とも心優しい魔法使いです。
老婆心と現実とのギャップ?
ところが、子どもたちはプレゼントが気に入らないとか早すぎるとか、文句ばかり言います。
世代が違うと価値観も異なるもので、善かれと思ってやったことが仇となったり「余計なお世話」といわれたり……。アイディアと配慮に満ちた老婆心を置いてけぼりにして、快適さと合理性を追求した経済優先の現実世界に、これで良いのかなぁと思うのもまた老婆心かも知れません。
困り果てた魔法使いが、次に打った手は……?
続きはお手元でお楽しみいただけると幸いです。
魔法使いのお婆さんの、揺れ動く内面が佐野洋子によって見事に描写されています。魔法使いの心情、現実とのギャップ、そしてオチへとつながる展開は、さすが森山京と唸ってしまいました。
なぜか魔法使いはいつもお婆さん!
そういえば、魔法使いは何故かほとんどお婆さんです。魔女と呼ばれることもあります。
広辞苑には、魔女はヨーロッパの伝説にあらわれる妖女であり、悪魔と結託して人に害を与える、と書かれています。「人に害を与える」という件が恣意的に思えますが、実際「白雪姫」や「シンデレラ」など、魔法使いのお婆さんは常に主人公のお姫様を陥れようとしてきました。
その原動力となっているのが「孤独」や「嫉妬心」
「孤独」の反意語は「連帯」ですが、孤独は「孤高」にもなり連帯が「同調圧力」を招くこともあります。ほんの些細なさじ加減で尊敬されたり卑下されたりしてしまうのです。広辞苑で「悪魔と結託して人に害を与える」とありますが、魔法使いのお婆さんもいろいろ個性があるのでしょう。悪魔もそうかも知れません。
そんな悪魔や魔法使いのお婆さんたちを、大らかな気持ちで包んでくれるサンタクロースは偉大です。
神か仏か、それともただのお爺さんか……。
そういえば、魔法使いはお婆さんが定番ですが、サンタクロースはいつもお爺さん……。
実は夫婦だったりして……?
作者紹介/森山 京・佐野 洋子
森山 京(もりやま みやこ)
1929~2018年 東京生まれ 神戸女学院大学中退 コピーライターを経て1968年「子りすが五ひき」で講談社児童文学新人賞佳作を受賞、童話作家になる。その他、ボローニャ国際児童図書展エルバ賞特別賞や路傍の石幼少年文学賞、小学館文学賞など多数の受賞歴がある。2014年には児童文化功労者として表彰される。
佐野 洋子(さの ようこ)
1938~2010年 中国北京生まれ 絵本作家・翻訳家・脚本家 武蔵野美術大学卒業後、1966年に単身渡欧しベルリン造形大学へ。1977年「わたしのぼうし」で第8回講談社出版文化賞絵本賞。同年刊行された「100万回生きたねこ」は今なお大人気のロングセラーとなっている。